妙國寺にある、名勝妙國寺庭園には、立派な石組に囲まれた、見事なソテツの木があります。樹齢は1100年以上で、国の天然記念物に指定されている名木です。ソテツは暖かい地方のお屋敷や寺によく見かける植物で、漢字で蘇鉄と書かれるとおり、弱っていても鉄を根元に与えると蘇ると伝えられています。
妙國寺(堺市堺区)のソテツには、織田信長にまつわる伝説があります。
妙國寺のソテツに魅了された織田信長は天正7年、この木を自らの居城である安土城の庭に移植しました。ある夜、庭を眺めながら一人静かに考え事をしていると、どこからともなく奇妙な声がしてきます。家臣に調べさせたところ、ソテツの木が妙國寺を恋しがり、しきりと「帰ろう」と繰り返しているとのこと。声を聞くうちに我慢ならなくなった信長は、切ってしまえと家来に命じますが、切りつけた家来は皆血へどを吐いてばたばたと地面に倒れる始末。さすがに祟りを案じた信長は、ソテツを妙國寺へ返上しました。
寺に帰れたソテツは安心したのか、それまでにたまった疲れが出てぐったりと弱ってしまいました。妙國寺を開山した日蓮宗の名僧日珖が、法華経一千部を唱えてソテツの回復を祈っていると、ソテツの声が聞こえます。「根元に鉄でできたものを埋めてください。あなたのお経と鉄分で私が生き返ることができた暁には、男を険難から守り女の安産を助ける神となって、ご恩返しをいたしましょう。」
日珖に命じられた鍛冶屋の鉄屑を与えられたソテツは見る見るうちに元気になり、宇賀徳正竜神と名付けられ御堂も建てられました。それ以来、安産祈願の人々がソテツの根元に折れ針や鉄屑を埋めるようになりました。